積読が山脈でござる🍀

拙者、四児母オタク主婦。積読本記録と妄想感想文でござる。育児や教育の本が多いです。

『ペストの記憶』&『ペスト』比較。ダニエル・デフォー著

 

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せっかく両方購入したので比較してみようと思います。

『ペストの記憶』武田将明訳

『ペスト』平井正穂訳

どちらもダニエル・デフォー『A journal of the plague year』(1722)の完訳です。

 

 

【『ペストの記憶』&『ペスト』比較】

 

〈新旧〉

『ペストの記憶』は2017年、『ペスト』は1973年に出版。

44年の差があります。

 

〈値段〉

『ペストの記憶』が税抜き3,500円、『ペスト』は税抜き1,200円です。

約3倍の違いがあります。

 

〈装丁〉

『ペストの記憶』はハードカバー、『ペスト』は文庫本です。

 

〈シリーズ物〉

『A journal of the Prague year』はシリーズ物ではありませんが、『ペストの記憶』は研究社より出版されている『英国十八世紀文学叢書』の第3巻になります。

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↑『100分de名著 デフォー ペストの記憶』広告ページ

ちなみに叢書(そうしょ)は本のシリーズのことだそうです。

勉強になるでござる。

 

〈文章構成とレイアウト〉

『ペスト記憶』はエピソードごとにタイトルをつけて区切ってあります。

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↑『ペストの記憶』目次。

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↑『ペストの記憶』p126-127

実は原作には章立てはなく、したがって長編ながら区切りはありません。

原作のままの構成の『ペスト』も、440ページのうち区切りは数個です。

上記の『ペストの記憶』と同じ場面です。

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↑『ペスト』p186-187

法令も住民のエピソードも主人公の気持ちも同じように書かれていて、これが思ったよりも読みづらい印象です。

例えばロンドン市からのペスト対策令。

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↑こちらは『ペストの記憶』。p48-49

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↑こちらが『ペスト』。p76-77

章立てとレイアウトでこんなに読みやすさが違うんだなぁと思いました。

 

〈地図〉

『ペストの記憶』『ペスト』ともに詳しい地図が載っていますが、

『ペストの記憶』は出版社のサイトで赤いグリッド線の入ったPDFの地図データを無料配布されています。

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↑プリントアウトしたもの。リンクです↓

ただ、私のスマホiPhone 7)からでは赤いグリッド線が出ませんでした。

パソコンから印刷する必要があります。

 

〈写真〉

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↑『ペストの記憶』には筆者が2012年に取材した際の写真が3枚掲載されています。

『ペスト』には写真はありません。

 

〈挿画〉

『ペストの記憶』にはイラストはありません。

『ペスト』はレズリー・アトキンソン*1作の挿画が5枚ほどあります。

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銅版画のようなタッチの絵です。

 

〈まとめ〉

今回、翻訳の質については比較していません

私などが専門家を比較評価するなど、おこがましいと思ったからです。

なので書籍の見た目のみの比較となります。

『ペストの記憶』は『ペスト』と比べて価格は高いのですが、レイアウトと文章構成が工夫してあり、読みやすく出来ています。

図書館でどちらも借りれるなど価格を考慮しないでいいなら『ペストの記憶』をお勧めします

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〈こっそりおまけ〉

…完訳でなくあらすじでいい、専門家の解説も欲しいというあなたへ。

現代の写真5点、解説図、翻訳家の解説もあり、レイアウトは工夫されて読みやすい本があります。

『100分de名著 デフォー ペストの記憶』(武田将明著)です

なにより、価格が税抜き524円なのです・・・。

ペスト (中公文庫)

ペスト (中公文庫)

 

*1:カバー原画について、裏表紙裏に「フォールコン社版『ペスト』A Journal of the Plague Year(1950年)のカバー絵(レズリー・アトキンソン画)より」と書かれています。

イラストレーターについては上手く調べられなかったのですが、どうやら20世紀になってから付けられたイラストのようです。