積読が山脈でござる🍀

拙者、四児母オタク主婦。積読本記録と妄想感想文でござる。育児や教育の本が多いです。

『モモ ミヒャエル・エンデ 100分de名著 「豊かな」時間とはなにか?』

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NHKテキスト 河合俊雄著 2020年出版

 

8月の100分de名著のテーマはミヒャエル・エンデの『モモ』です。

先々月の『純粋理性批判』先月の『共同幻想論』はまったく追いつきませんでしたが、今月こそはとテーマの本とテキスト読破がんばりました。

面白かったポイントをピックアップしようと思います。

 

 

著者、河合俊雄氏

今回のテキストの著者は、京都大学教授、臨床心理学者でいらっしゃる河合俊雄さんです。

河合隼雄博士の息子さんでもあります。

上梓されている書籍は

『概念の心理療法ーー物語から弁証法へ』

ユング心理療法

村上春樹の「物語」ーー夢テキストとして読み解く』

です。

 

 

摂食障害者の作る箱庭との共通点

心理学的な視点で『モモ』を読み解いていくこのテキスト。

着眼点の深さと親しみやすさは両立するのだなぁと思わせてくれます。

例えばマイスター・ホラ、カシオペイア、モモの3人の関係。

この3者の関係が摂食障害者の作る箱庭と共通点があるそうです。

箱庭療法において、摂食障害の人、特に一昔前の拒食症の人が作る箱庭には、しばしば少女と老人男性と犬が出てくることを河合隼雄は指摘しています。摂食障害になるのは圧倒的に女性が多いのですが、箱庭の少女は、大人とか性を排除した自分を表していると解釈できます。そして、多くの場合で女性性との葛藤があるため、母親や若い男性は登場しません。男性として出てくるのは老人で、これは知恵を象徴します。また、接触障害者の夢にはよくビルや塔が出てくるのですが、これは当人にとって精神の崇高さが重要であることを表します。箱庭においては、そのシンボルとして知恵のある老人男性が出てくるのです。それに対して動物である犬は本能を表しています。

少女→モモ

老人男性→マイスター・ホラ

犬→カシオペイア

という関係ですね。

 

 

マイスター・ホラ

灰色の男たちの追跡を逃れたモモは、時間の国にたどり着きました。そこで出会うのがマイスター・ホラです。正式な名前はマイスター・ゼクンドゥス・ミヌティウス・ホラ。ラテン語でゼクンドゥスは秒、ミヌティウスは分、ホラは時間を表します。

マイスター・ホラ、本人が時間やーん!

 

 

 

時間の源に対する考察

『モモ』の物語の中では金の殿堂内の振り子と美しい花で表現される“時間の源”。

河合俊雄氏は華厳経の「一即一切」「一切一即」仏教のマンダラヴォルフガング・パウリの夢の宇宙時計との共通点を挙げて考察されています。

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可愛かったので模写してみました。

(あっ、字が間違ってますね、パウルじゃなくてパウリです。)

 

パウリは偉大な物理学者で『まんが 偉人たちの科学講義 天才科学者も人の子』にも出ていました。

こちらで読むパウリのイメージと上の可愛い鳥さんのギャップが面白いです。

こちらのマンガもおススメ。

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『モモ』の物語の中に“速くなるほど遅くなるさかさま小路”というのがあります。

これは、物が光の速さに近づくほどその物の時間の流れが周りより遅くなる、というアインシュタイン特殊相対性理論に似てると思うのですよね。

あと、時間貯蓄銀行の仕組みで、“時間を預けると利子がついて帰ってくる”とありまして、時間が増えるってどういうことだろう…とか思いました。

物理学者の方にもぜひ考察して欲しいなあ。