『春にして君を離れ』の巻
主婦の御方には耳が痛い?いやいやイタ気持ちいいやも知れませぬ。
アガサ・クリスティ著『春にして君を離れ』の感想でござる。
拙者ミステリはトリックが難しくて読めないが(探偵ものは探偵と助手の関係性だけ味わう←ひどい)これは一気読みしたでござる。
なんとAmazonレビュー118件!(2019年5月現在)。
名探偵エルキュール・ポアロの『そして誰もいなくなった』が同118件。
『アクロイド殺し』が90件。
『オリエント急行の殺人』が48件。
なので彼女の代表作と言っても過言ではないが、他と比べてやや知名度は低いような。
1944年に出版され、発表時はアガサ・クリスティではなくメアリ・ウェストマコットという別名義だったからかもしれぬ。
あらすじ
イギリス人主婦のジェーン・スカダモアは、弁護士である夫のロドリーと独立し結婚した3人の子供達との関係も良好。順風満帆な人生を送っていた。
体調を崩した娘の見舞いへバクダッドへ行った帰り、ブランチ・ハガードという女学院時代の友人と偶然に出会う。ひどく老けて見える同窓生を見て自分の充実した人生を満足に思うジェーンは、しかし彼女の言葉が気になって仕方がない。自分は何かとても大切な事に気付かずここまで来てしまったのではあるまいか。
帰りの汽車が大幅に遅れ、砂漠の小さな町に閉じ込められたジェーンはこれまでの人生を一つずつ省みる事になるのだった。
(下記ネタバレでござる!)
いわゆる“信頼できない語り手”が語る叙述トリックもので、自分が過去、夫と子供達の人生を手酷く踏みにじってきた事、夫が不倫というか、妻の自分とは別の運命の女性を見出していた事にジェーンは気がつくでござる。
後悔したジェーンはイギリスに帰って夫に懺悔しようとするが、途中で会った上流貴族の公爵夫人の影響か、何事もなかった様に以前の日常に戻る…というストーリー。
ええええそれでいいのでござるかジェーーーン?!
調べると、どうやら博識の方にはタイトルで不倫の話だと分かるようでござる。
シェークスピアの『ソネット集』という詩集からタイトル『春にして君を離れ(Absent in the spring)』は取られていて、そのソネット集は不貞の話でござった。
訳が結構良い気がするんでござる。
いや拙者言うほど翻訳本読んでないのでござるが、分かりやすいし何よりタイトルめちゃカッコいい。
灼熱と氷点下の広大な砂漠にたたずむ、罪に気付かぬ孤独な貴婦人。
絵になる。良き。
春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫) アガサ・クリスティー https://www.amazon.co.jp/dp/4151300813/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_q8J3CbEJH8FNG